2020.2.26
「舞踏花伝」をWebで公開
1998年、舞踏家 和栗由紀夫(1952-2017)は土方舞踏の「舞踏譜」の世界をまとめたマルチメディアCD-ROM「舞踏花伝」をジャストシステムから発表しました。それにより、言葉を通してイメージを身体化する土方舞踏独独自の振付法は”BUTOH-FU”として世界に知られることとなりました。初版から20年経ち、コンピュータの再生環境の変化により閲覧が不可能となり、惜しまれていましたが、このたび、2017年に亡くなった和栗由紀夫の遺志を継いだWeb版舞踏花伝製作委員会が、次のWebサイトを公開いたしました。
ーーはじめに言葉ありき
言葉を通してイメージを身体化する
「舞踏譜」の世界へ、ようこそ
古今東西の美術、自然への洞察、材質や空間の把握、民俗的な身体性・・舞踏の創始者である土方巽(ひじかた たつみ)は、舞踏表現の源泉として、さまざまなイメージやものごとを認識する回路をたくさんもっていました。イメージの源泉であるたくさんの「引き出し」のひとつひとつを開く鍵として、土方巽が用いたのは「言葉」でした。
「言葉でイメージを身体化する」手法で土方が弟子たちを振付けて創作した作品群は、演劇、美術、文学の世界にまで大きな衝撃と影響を与えました。これが、20世紀後半の日本に生まれ、いまや舞台芸術の新たなジャンルとなった「舞踏」のはじまりです。
1998年「舞踏花伝」発刊
土方巽の弟子であった舞踏家 和栗由紀夫は、1998年土方巽の十三回忌にあたり、土方の振付作品の「台本」にあたる「舞踏譜」を、マルチメディアCD-ROM「舞踏花伝」としてジャストシステムから発表。土方が発明した「言葉を通してイメージを身体化する」方法は、この「舞踏花伝」によってはじめて、世に明らかにされました。以来、「舞踏花伝」は、舞踏のみならず表現に関わる多くの人に豊かなインスピレーションを与える源泉となってきました。
20年間人々に愛されてきた「舞踏花伝」
コンピュータの再生環境の変化とともに「舞踏花伝」はCD-ROMからDVD-ROMへ、バージョンアップしながら再版を重ね、多くの人の手に届けられるロングセラーとなりました。
初版から20年が経過しようとしていた頃、当時のデータのままではコンテンツの閲覧がいよいよ困難になっていたため和栗由紀夫をはじめとする初版の制作に携わっていたメンバーは「舞踏花伝」をWeb上で公開する必要性を感じはじめていました。ところが、そのプロジェクトを立ち上げようしていた矢先、2017年10月22日に和栗由紀夫はこの世を去りました。
2020年Web版「舞踏花伝」の公開
その遺志を継いで、2018年5月にWeb版「舞踏花伝」製作委員会がたちあがりました。慶應義塾大学アート・センター 土方巽アーカイブからの素材提供や株式会社サイゾーからの資金協力を得て、「舞踏花伝」を誰もがWeb上で閲覧できるようコンテンツの再編集作業が行われ、2020年2月26日、故・和栗由紀夫の誕生日に、公開しました。
ご寄付のお願い
Web版「舞踏花伝」は、製作、課金なしで公開していますが、サイトの継続的な維持管理には、資金が必要です。次のような方法で随時寄付を募っております。「舞踏花伝」が豊かなイメージの世界への扉が今後も開かれてあるために、皆様のご協力をお願いいたします。
2018.4.21
追悼公演 「魂の旅」 無事終了しました!
2017年10月22日に急逝した和栗由紀夫を偲ぶ展示、公演、映像上映イベント「魂の旅」を、2018年4月21日に東京ドイツ文化センターで、行いました。多数のご来場、ありがとうございました。
■ 「和栗由紀夫 魂の旅」特設Webサイト
https://butoh-kozensha.tumblr.com/
14:00 | 受付開始、開場 | ||
15:00 | 第一部 「楼閣」 | 開会挨拶 | 谷川渥 |
舞踏 | 小林嵯峨 | ||
演奏 | YAS-KAZ、ウォン・ウィンツァン、井野信義 | ||
映像上映 | 1972年 土方巽舞踏公演「四季のための二十七晩」より『疱瘡譚』 | ||
1989年 中嶋夏(霧笛舎)作品『眠りと転生』 | |||
1994年 和栗由紀夫+好善社公演『野の婚礼』 | |||
舞踏 | 山本萌 | ||
舞踏 | 正朔 | ||
トーク | 「和栗由紀夫と舞踏譜」森下隆、後藤光弥 |
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16:30 | 第二部 「翼」 | 和太鼓 | 富田和明、東京打撃団(露木一博、藤本恭平) |
ダンス | 関典子「マグダラのマリア」 |
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舞踏 | 工藤丈輝 | ||
映像上映 | 2007年 和栗由紀夫ソロ(大野一雄百歳の年ガラ「百花繚乱」より) | ||
2017年 和栗由紀夫最後の舞台『病める舞姫』 | |||
舞踏 | 川本裕子、山﨑麻衣子、板垣あすか、加藤みのり、岡元ひかる、岡田みはる、千葉郁子 | ||
映像:TETSU 音楽:曽我傑 |
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18:00 | 終演予定 |
2017.10.22
訃報
舞踏家 和栗由紀夫は、2017年10月22日、膵臓がんのため、死去しました。65歳でした。
10月19日に京都精華大学で「舞踏の現在」と題した公演とレクチャーを行ったばかり。亡くなる直前まで踊り続け、ダンサー人生を全うしました。2017年10月28-29日に近親者で葬儀・告別式を行いました(喪主は妻・佳織さん)
和栗 由紀夫(わぐり ゆきお=舞踏家)
「舞踏」の創始者・故土方巽に師事。「好善社(こうぜんしゃ)」を主宰し、国内外で公演。多くの若手舞踏家を輩出した。
土方巽から振付けられた「舞踏譜」をデジタルコンテンツ「舞踏花伝」としてまとめたことは、舞踏の表現技法の継承、普及につながった。
早稲田大学文学部、慶応大学アートセンターで教鞭を執り、舞踏譜の研究に寄与したほか、海外で多くの教育機関、舞踊グループ、劇団などでワークショップ、振付、演出をした。